TechXNY 2001.8.5

"PC Expo" と呼ばれたニューヨークのパソコン・ショーは、パソコンの威信低下とともに、とうとうTechXNYに吸収された。そのTechXNYだが、ラスベガスのコムデックスなどと同様に、最近は、ウェブのおかげで現地へ出かけなくても、綿密に整理された情報が効率よく入手できるようになった。現地の混雑の中で歩き回って疲労困憊したあげく、重要な情報を取り逃がして帰った経験が何度もある私には、これは大変ありがたいことである。

それにしても、最近のパソコンの斜陽はひどい。特に、プロセッサの供給性能が需要性能を大幅に追い越してしまったため、新製品に魅力がなくなり、ユーザは頻繁に買いかえる必要がなくなったのが大きい。TechXNYもご多聞にもれず、話題の中心はパソコン自身ではなく、ちょっとした工夫で差別化をはかったソフトウェアやハードウェアである。

変わったところでは、zTraceGold4.0 がおもしろい。これは、ノートブック・パソコン向けの盗難対策ソフトウェアである。これをノートブックPCにインストールしておくと、万一盗難にあっても、窃盗者がインターネットに接続したとたんに、このソフトが作動してIPアドレスまたは接続先電話番号を警察に通報する。zTrace社によれば、実際あった話だそうだが、ある会社の社員が会社から支給されたノートブックPCの盗難届を出した。ところが、数日後、zTraceGoldによる通報があり、逆探知したところ実はその社員の自宅だったそうである。その社員は、会社が支給したノートブックに盗難対策ソフトがインストールされていたことを知らなかった。このソフトは、zTrace社に連絡して隠しコードをもらわない限り、簡単にはアンインストールできないので、知っていても盗んだ後の使い方は大幅に制限される。価格は50ドル。ノートブックを出張に持ち歩く人には、必需品であろう。

ノートブック・パソコンなら、コンパックのEvoN200とカシオのCassiopeiaFivaが、電池寿命を競っていておもしろい。前者は600MHzのペンティアムVに128MBのDRAM(随時読み書き記憶)、20GBのHDD(ハードディスク・ドライブ)を積んで2000ドル。エクストラ電池を使えば、電池寿命は8時間まで延びる。後者もプロセッサにクルーソを使って、ほぼ同様の仕様で2000ドル、9時間である。いずれも、これだけ電池が持てば太平洋線のフライトでも十分使えるであろう。電池寿命も大した改善度だが、私が感心するのは、128MBのDRAMと20GBのHDDを積んで、 厚さ2センチ重さ1.3キロを実現していることである。恐ろしいまでの改善技術と言えよう。パソコンもこれほどの成熟段階に入れば、日本は絶対に強いはずだからあとは価格競争をいかに戦い抜くかである。

小型化のついでに、ハンドヘルドに言及すれば、ソニーがカラースクリーンを目玉にしたパーム仕様のClieを400ドルと500ドルの2機種出している。一気に200ドルの低減である。これに負けじと、カシオは300ドルのカラー版を出した。こちらはウィンドーズCE版である。ハンドヘルドそのものではないが、外見がハンドヘルドとそっくりのモトローラのページャT900(100ドル)は、同社のMyMailソフト(30ドル)を買い足すと、Eメール専用機に変身できる。つまり、MyEmailを親機のパソコンにインストールし、Eメール・サービスにログオンしておくと、外出先でT900を使って親機のEメールをなぞることができる。これで、ハンドヘルド業界には、電卓屋さんからパソコン屋さん、通信屋さんまで各種の企業が参入したことになる。はたして、どこの業界がハンドヘルド市場を制するのか。答えは簡単ではないが、私は少なくともパソコン業界ではないと思う。ハンドヘルドはパソコンに比べて台数があまりにも少なく、一方、価格は極端に安いから、パソコン業界の体質では無理であろう。

通信で言えば、無線によるホーム・ネットワークは、今や802.11bがブルートゥースを上回る展開である。これで、インテルのホームRFネットワークは終わりであろう。どの分野も最後に残るのは1社のみ。通信ネットワーク業界も競争は熾烈である。

熾烈な競争といえば、ヒューレット・パッカード社の一人勝ちだったプリンター業界にも、ミノルタがようやく一石を投じた。わずか1000ドルのカラー・レーザーである。これまで2000ドル、安売りで1500ドルだったから、これをきっかけにモニターに比べてカラー化の遅れているプリンター業界も頑張ってもらいたい。ただし、高くても500ドルのモノクロ・プリンターにはまだまだだ届かないから、カラー・プリンターの普及は簡単ではない。

最後に、DRAMと同様に生産過剰と価格戦争の悪循環からなかなか抜け出せないハードディスク業界について触れておこう。これまで、ハードディスク技術には何回かの容量の壁があった。最初は、528MB、次が8GB、現在が137GB、そして将来は2.2TBである。その137GBの壁を、近々マクスターが破りそうである。現在、パソコンをワープロとEメール程度にしか使わない人には、ハードディスクは1GBもあれば十分だが、今後、パソコンで音楽や写真、そしてビデオを扱うようになると、100GB程度は欲しくなるであろう。ただし、通信速度も、それに併せて速くなってもらわないと100GBが宝の持ち腐れになってしまうことは言うまでもない。(田代駿二)

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皆さんの意見
【2】
8/14(火) - 田代駿二

トレードショーは、確かに最近はその場で商談が行われることが少なくなって、昔日の面影はありません。コムデックスも、パソコンベンダーは参加しなくなり、ソフトバンクも手放したようです。それでも、アメリカ人はお祭りが好きだし、ビジネストリップが好きだし、マイクロソフトのような儲かっている企業が宣伝媒体として有効と認める限りは、なくならないでしょう。また「ウェブのおかげで現地へ出かけなくても綿密に整理された情報が効率よく入手できるようになった」とは言え、以前何度か行ったことがあるからおおよその見当がつくのであって、一度も行ったことなしにインターネットだけで情報を得るのは容易ではないと思います。

【1】
8/13(月) - 山田章

PC EXPO は、数年前(1998年?)に一度見ただけですが、そのころから何か焦点が呆けているように感じていました。私は、技術には門外漢ですので、ショーの見方は、極めて大雑把です。おまけに、会場は、いずれも大変広く、まずは、鳥瞰図をうるためにざーと歩くのが常ですが、それだけでも疲れてしまいます。したがって、ショーによって見方を次ぎのように分類して対応してきました。 @主要競争他社、コアカスタマーの合従連衡・栄枯盛衰を見る(企業を見る)A業界のキーマン、友人との再会等により、人脈維持拡大をはかる B新製品、some thing new のみをピックアップ C代理店相手に新製品中心に販売目標達成フォロー 等です。

それでも、C以外は、独断と思いこみが先行し、部分を全体的視野のなかでバランスよく捉えることが大変難しいことが悩みでした。その意味では、自分が歩きまわって見るより、会場で配布されるガイダンス記事やインタネット等IT情報を自宅で分析する方がはるかに効率的です。まさに、田代さんご指摘の通りです。

アメリカはある意味でトレードショーの国ですが、IT情報がそれに完全に取って代わり、アメリカからトレードショーがなくなる日が何時来るのでしょうか?




電子掲示板プログラム名:MiniBBS2000

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